前回、そして前々回と、いわゆる大企業がソーシャル メディア マーケティングなるモノを展開していくにあたって、“まず傾聴戦略こそ重要なのではないか” というコトについて語ってみた。
実は、今回も、その延長になってくるのだけれども、具体的に “傾聴戦略” って、どういう風に考えればいいのか、というコトについて少し触れてみようと思う。
そういうわけで、今回のエントリーは、普段 “ソーシャル メディア マーケティングにおいて、(とくに海外における) 先行事例はあまり役に立たない” と言っているが、あえてひとつ事例的なモノをピックアップしてハナシを進めてみたいと思うわけで。
さて、この “傾聴戦略” なんだけれども、実は、コレは正直なトコロ、あまり目立たない、言い換えれば非常に “地味な” 戦略だったりする。実際、Twitter アカウントからの Tweet であったり、ブログのエントリーであったりといった、いわゆるソーシャル メディア上におけるアウトプットによる Buzz や口コミを直接的に求めているわけではないし、そもそも “聴く” という行為自体、それほど目立つようなモノではない。ともすれば “何もしていない” という風に誤解されがちだ。
そういうわけで、自身も、この “傾聴戦略” における事例というモノを、しっかりと知っているわけではないのだけれども、おそらくは誰も知らないであろうケースを取り上げつつ、語ってみようと思う。
昨年の 10 月下旬、ひとつの “企業オフィシャル Twitter アカウント” が開設された。開設されて以来、約 5 ヶ月。現在の Follower 数は 3,100 人あまり。ここまでの累計 Tweet 数は 105 と少ない。Tweet の内容は、別途開設されているブログからのフィードや中の人が発信する情報。そして、ReTweet が少々。Tweet 数は決して多いとは言えないし、フレンドリーな語り口でもない。そのため、傍目には非常に地味な印象なのだが、実は、これは “傾聴戦略” のひとつの形でもある。
実際、このアカウントの中の人は、随時 Twitter 上で、どんな会話が交わされているかをしっかり確認している。ソレは、TL を読んでいる、つまり Follow している人の会話だけを見ているわけではなく、自分たちのアカウントで Follow していない人の会話まで、色々と検索をしつつ、チェックしている。
こうやって、まず Twitter 上での話題を確認し、その中に、自分たちの関わる製品等に関して、たとえば困っていることや技術的に悩んでいるような会話を見つけ、(自分たちのできる範囲で) その解決策や手掛かりをブログに書いたり、あるいは Tweet したりする。
その際、中の人は、その会話の主に対して @ で Reply を返しているわけではない (ときどき、話題によっては @ で返すこともあるのだけれども)。会話をしているというわけではないが、Follower あるいはブログの閲覧者全員に、その情報が適切に届くように情報を出している。それは、困っていることや技術的に悩んでいるような Tweet をしていなくても、実際には困っていたり悩んでいたりする顧客は少なからず存在するであろうというコトを考えているからだ。
また、Tweet やエントリーに反映されないアクションも色々とある。たとえばある情報を掲載している Web サイトの記述に対して、なかなか理解できない、よくわからない、というような Tweet (決して Follow しているわけでもなく、@ で問いかけられているわけでもない) を見つけ、Web サイトの記述をわかりやすく直したりするようなケースも少なからずある。
直接問いかけられているわけではない。あくまでも Twitter 上における会話を “聴く” コトに専念し、その状況に応じて的確なアクションを取っているに過ぎない。別に “みなさんを積極的にサポートしています” というコトを声高にアピールするわけでもないし、“何でも訊いてください” というような窓口的な役割を打ち出しているわけでもない。そもそも、この Twitter アカウントはサポート窓口では決してないし、サポートはサポートで、当然 (ソーシャル メディア上ではないトコロに) 専門の窓口が存在する。ただ単に、中の人が、Twitter 上で交わされている会話を “聴く” コトに専念し、その中の人 (当然サポートを担当しているわけではない) ができる範囲で、顧客に役立つであろう情報を提供しているという形だ。
そういった活動が徐々にカタチとなっているのか、少なく、かつ淡々とした Tweet をしているだけのアカウントの Follower は、急激ではないが、確実に一定のペースで増加している。コレは中の人の地道な努力の結果でもあるだろう。
決して目立とうとしているわけではない。むしろ Follower によっては、半ば空気のような存在になっているかもしれない。だが、その空気のような存在が、あるとき、自分にとって、ふと有益な情報をもたらしてくれる。こういったひとつひとつの小さなコトの積み重ねが、やがて “エンゲージメント” や “絆” という言葉に昇華されていくのだろう。そして、コレは “聴く” というコトをおろそかにしては、決して実現し得ないと思うのだ。
Buzz や口コミを求めるコトは、決して間違っているとは言えないのだが、これもひとつのソーシャル メディア マーケティングの実践例なのではないかと思うのだ。
前回も触れたように、企業規模が大きくなればなるほど、直接的に顧客の声を聴くコトができる機会が少なくなってくる傾向にある。また、実際聴くコトができる人間も、数限られてしまうコトになりがちだ。
そういった企業がソーシャル メディア マーケティングを始めていく場合、今回取り上げたようなアプローチも十分考えられるのではないかと思う。実際、コレは、いわゆる大企業で実践されている例だからだ。

