大企業がソーシャル メディアに踏み込まないわけ

気がつけば、今の居場所に身を置いて、もう 3 年半近く経った。実は、今身を置いているトコロが 6 社目で、これまでずいぶん転職を重ねてきて現在に至るのだけれども、いわゆる “大企業” といわれるトコロに身を置くのは、ココが初めてだったりもするわけで。

さすがに 3 年半近くもいると、それなりに色々と思うコト、感じるコトなども出てくるし、なにより、いわゆる “企業文化” というようなモノも、知らず知らずのうちに身に染み付いてしまう。個人的には悩みどころでもあるのだけれども。

そんな中、本日 (1/7) 何かと Twitter 上で少なからず話題になっているエントリーを読んだ。あまりにもインスパイアされてしまったので、今回のエントリーをまとめるコトにいたったわけで。

大企業はなぜソーシャルメディアを恐れるのか? – in the looop

率直に言うと、このエントリーに書かれているコトは、かなり的を射ているし、むしろ今となっては、いわゆる “大企業” といわれるトコロの “企業文化” というモノが日々染み付いていっている自身にとって、かなり耳が痛い部分もあったりする。悲しいけれども…。

ただ、いくつか疑問に感じるコトはある。その最たるモノは “大企業であっても決してソーシャル メディアを恐れているわけではない” というコト。これだけが一人歩きしないように補足すると、むしろ、ソーシャル メディアへのアプローチの必要性であったり、ソーシャル メディアを活用しないコトに対する危機感といったモノは、企業規模に左右されるモノではないのではないかと思っている。もちろん、アウトプットとして、ソーシャル メディアを活用した施策が世に出るまでにあたって、そのフットワークが若干鈍いというトコロは否定できないのだけれども…。コレは、元のエントリーにもある通り、

私自身,20代は大企業で多くを学び,その組織運営システムも体験した。社内説得や稟議プロセスの困難さは理解しているつもりだ。

というコトで、その社内説得もとい社内調整等々のプロセスや、それ以前にステークホルダーの多さとなると、比較にならないくらい煩雑になってくるわけで。

実際のところ、現在は (もちろん程度の差はあれど) ソーシャル メディアを全く理解していないマネジメント層は減っている傾向にあると思っている。ただ、ソーシャル メディア活用によるメリットまで、本当の意味でしっかりと理解しているかというと、ソレは少数になってしまうかもしれない。とはいえ、コレは企業規模によって左右されるモノではないだろう。

現状、確かにソーシャル メディアを活用した施策は多く世に出てきているし、実際、その多くは企業規模という点だけで見れば大企業とはいえない企業の事例が多い。とはいえ、じゃぁ、大企業ではない企業が軒並みソーシャル メディアを活用した施策を打ち出してきているかというと、そうとも言えないのではないかと思うわけで。

それこそソーシャル メディア活用のメリットどころか、ソーシャル メディアそのものを全く理解していない企業だって、いわゆる大企業に限らず、それなりに存在するだろうし、仮にソーシャル メディアを活用した施策を展開していたとしても、ソレが本当にメリットを明確に追い求めた上でのアウトプットか、という点で見れば、決してそうではない施策だって、少なからず見受けられる。

元のエントリーで、ソーシャル メディアの活用の有無と、そのメリット・デメリットを図式化したモノが載せられているが、コレは何も大企業だけに当てはまるモノではないわけで…。

むしろ、ココでいう [ソーシャルメディアを活用する] – [メリット] の “わからない” であったり、[ソーシャルメディアを活用しない] – [デメリット] の “関心がない (考える習慣が無い) ” というスタンスを地で行っているマネジメント層のヒトは、もはや大企業であっても生き残るコトができないような状況にあると思っている。

決して、大企業にいるから古い水夫になってしまうわけでもないし、大企業の中のヒトがゆでガエルであるというわけではないと思うわけで。

ただ、現実問題として、企業規模が大きくなるにつれて、どちらかというと、ソーシャル メディア活用といった、いわゆる新しい概念に基づいた施策のアウトプットは出てきてはいないように思える。コレには別の理由があるのではないかと思っている。

ソレは、

  • ステークホルダーが多くなるコトによる、社内プロセスの煩雑化と長期化
  • 求められる結果のシビアさと正確さ
  • 顧客、パートナー、関連事業者等々すべて含めた影響範囲の広さと深刻さ
  • その影響範囲を鑑みた上での慎重さ

である。

一番最初の点については、すでに冒頭の部分で触れている通りで、企業規模が大きくなればなるほど、ヒトも多くなるし、ソレに伴ってステークホルダーが増えてくる。正直、コレに関しては、ものすごくアタマの痛い部分ではあるのだけれども、非常に時間と労力を消費するコトになってしまう (もっとも、そのために色々と苦心している担当者もたくさんいるのだけれども) 。

そして、二番目以降の三点なのだけれども、コレは、あえて (多少語弊があるかもしれないけれども) 一言で言ってしまうと “勢いと成り行きに任せたビジネスは許されない” というコトになる。

何が一番悩みどころかというと、ソーシャル メディア活用施策を実践するにあたって、(元のエントリーにも触れられているけれども) その効果測定にある。

2010-2011年に企業のソーシャルメディア本格活用やROI測定がはじまるのはほぼ間違いない。競合企業も当然検討しはじめている。活用/不活用のメリット・デメリットを深く理解したうえで,その投資効果や運用体制,開始時期やステップを検討すべき時期が来ているのだ。残された猶予期間はあと1-2年ぐらいだろう。

ココにもある通り、まだ本格的な ROI 測定等々、これからが本格化してくる。つまりまだ、有効といえる解が見いだされていないというのが現状だ。
(もっとも、ソーシャル メディア マーケティングを ROI で考えるという概念そのものに違和感を感じるし、ROI で考えている以上本質を踏み外しちゃいかねないような気もするのだけれども – “バイブル” が生まれる前のハナシ – 34 を参照)

そんな中、実際に企業は、効果測定のやり方について大いに悩んでいるのが現状なのだけれども、少なくとも “求められる結果のシビアさと正確さ” というモノがある以上、“ソーシャル メディアを活用すれば、顧客の engagement を高められます” という程度のハナシでは、実践に踏み切るコトができない。

少なくとも

  • どうやって “高まった” というコトが確認できるのか
  • その上で実践した際に、どの程度高めるコトができるのか

という二点が明確に説明できないと、実践なんて、とてもではないができない。なぜならば、その施策の実践に踏み切った際に、(企業規模が大きくなればなるほど) “顧客、パートナー、関連事業者等々すべて含めた影響範囲の広さと深刻さ” というモノが、もれなくつきまとうからである。

なので、四番目の “その影響範囲を鑑みた上での慎重さ” が常に要求されてしまうわけで。

自身は 5 社を散々渡り歩いた結果、現在のトコロに身を置いているのだけれども、正直、「なんで?」というような (はたから見れば) 些細なコトでも、ものすごく慎重に進めなくてはならない場合も多々ある。ただ、3 年以上身を置いている間に (ひょっとして染まっちゃった面もあるのかもしれないけれども) なぜ、そこまで慎重に進めなくてはならないのかも、身を持って理解しているわけで。

そういった様々なコトを考えると、ソーシャル メディアの活用に踏み切らない理由に企業規模はあまり関係ないと思う。そして、あえて言うならば、企業規模云々は別にして、自分の施策、ソレに付随する行動や発言に過度に慎重になりすぎなくても良いような状況下 (たとえば、施策の担当者が全責任を負えるような場合や、仮に失敗しても影響範囲が広くない場合等) であれば、ソーシャル メディア施策をスピーディーに始めやすいという点で有利だというコトになるだろう。

ソレは、決して “大企業はソーシャル メディアを恐れている” という結論にはならないのではないかと思うわけで。

最後に、このエントリー全般に関する補足としてひとつ。

このエントリーは、もちろん、元のエントリーを批判するモノでは決して無い、というコトだけはご理解いただきたいと思うわけで…。

むしろ、元のエントリーを書かれている斉藤さんは (面識は無いのだけれども) 日頃発信されている情報の多さ、そして深さから、尊敬しているくらいだ。

今回、このようなエントリーを書くようなきっかけもいただけたし、何よりも、元のエントリーを読んで、耳が痛くなるようなトコロも多々あったりするわけで…。

どちらかというと、いわゆる “大企業” といわれるトコロの中のヒトの意見を交えて、企業規模の大小関係なく、企業のソーシャル メディア活用における議論が、もっと活発になってくれれば…、と思っていたりもする。

ソレに、斉藤さんが次回以降に書かれるであろうエントリーも、非常に気になるし…。

このような悩みを抱えている方に少しでも役立てるよう,次回記事では,前向きな意味で次の一手,社内ソーシャルメディア推進作戦を考えてみたい。そこでは単なる攻めの策だけではなく,新しい海の危険をいかに防ぐか,守りの策もあわせてご提案したい。

自分も、コレに散々悩んで “バイブル” を作った経緯があるので、ぜひぜひ読ませていただきたいと、今から楽しみにしていたりするのだ。

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追記: このエントリーを公開した後、すぐに、元となるエントリーを書かれた斉藤さんより、コメント & Tweet をいただきました。本当にありがとうございます。
さらに、最近飛ぶ鳥を落とす勢いのイケダハヤトさんが、素晴らしいエントリーを書かれています。
SMM、求められているのは議論すること。権威を信じないこと。

コレも合わせて読むコトをお勧めします。

ソーシャル メディアを使うコトの最大のメリットって、こういうコミュニケーションがすぐに自然発生的に行われ、その結果、議論全体の質が向上するトコロにあるのかもしれないですね。

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追記 2: このエントリーも含めた一連の議論を、トライバルメディアハウスの池田さんが、さらに高めてくださってます。

「ソーシャルメディアマーケティングに取り組まないリスク」って?

ソーシャル メディアの本質は、こういうところに出てきますね。

コメント / トラックバック5件

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  2. 斉藤 徹 より:

    クマムラゴウスケ様

    ループス斉藤でございます。
    クマムラ様のブログはいつも楽しみに拝見させていただいております。

    また,さっそくにブログエントリーに大変深い内容のご指摘をいただき,心から感謝しております。

    ご意見,大変参考になりました。今回の主旨とタイトルについては,わかりやすく大企業ないし古い水夫と総括した形でとりあげておりますが,実際には業種ごと,企業ごと,個人の方の考え方に大きく依存するものだと思います。私自身,年齢的には完全に古い水夫ですし(笑)

    特に今回の記事で私がイメージしていた大企業とは,貴社のような最先端ITの外資系大企業というより,古くからの国産大手企業です。そしてその管理層は貴社のようなITリテラシーの高い方々ではない,むしろTwitterって何?という方々を想定しておりました。したがってクマムラ様の違和感は当然のことだと存じます。

    またご指摘の効果測定の困難や失敗時の影響力の大きさなどは,まさに重要なポイントだと感じております。その点は,「新しい海の危険をいかに防ぐか」という観点から次回記事に書かせていただきたいと存じます。

    クマムラ様のようなプロフェッショナルにご指摘いただいて,次回記事のハードルがものすごく高くなってしまいました(笑) ちょっと間をおかせていただくかも知れませんが,がんばって書いてみます。ぜひ次回,また今後も貴重なご意見をいただけると大変にうれしいです。

    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    ループス 斉藤 徹

  3. [...] 「大企業がソーシャル メディアに踏み込まないわけ」 どちらかというと、いわゆる “大企業” といわれるトコロの中のヒトの意見を交えて、企業規模の大小関係なく、企業のソーシ [...]

  4. gosuke より:

    斉藤さま。
    さっそくコメントがあり、びっくりしました。ありがとうございます。

    おそらく、斉藤さまのエントリーで挙げておられた「大企業」というのは、確かにおっしゃる通りで、自身のいるトコロというよりは、むしろ、(誤解を恐れずに言えば) ドメスティックかつ長く商売をして大きくなっている企業のコトなのではないかな、と思っていました。

    ただ、色々と考える中で「おそらく本質は企業規模というよりは個々人のマインドなのかも…」とも思い、このエントリーに至ったわけで…。

    とはいえ、おっしゃる通りで、確かに企業規模が大きくなってしまうと、なかなかにフットワークが鈍ってしまうのは事実です。実際、私も、ココに至るまで 3 年かかってしまいましたし… (苦笑) 。

    そして「なぜ自分の場合 3 年かかってしまったのか?」というコトを冷静に考え、自分が 3 年前に最初にソーシャルメディアに踏み込もうとした際に、何が欠けていたのかを振り返った中で、この結論に至りました。

    その結論は、自身の 40 日以上におよぶ連続エントリーに書き連ねた通りですし、それを社内に広めていったわけですが、斉藤さまのご意見も、非常に興味がありますし、楽しみにしております。

    今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    熊村

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